インターホンの履歴を何気なく確認したときだった。 見覚えのない中年のおじさんが映っていた。 無表情。まばたきひとつしない。ただ、まっすぐ玄関のカメラを見つめている。 押されたのは真昼間。 その時間帯によくあるイタズラかと思ったが、違和感が強か…
結局その日は玄関の前で待つのをやめて、部屋に戻った。不安になって、改めてGPSを開くと…配達員のアイコンが、家の周りを回っていた。 普通のルートじゃない。細い裏路地や、普段自転車でも通らないような幅の道を、ゆっくり、ゆっくり、円を描くように。 …
深夜一時すぎ。小腹が空いて、なんとなくマックを頼んだ。 この時間帯は混むはずもない。配達予定時間にも余裕があったし、玄関の前で待っていればすぐに受け取れる…そんな気持ちで、軽い気分だった。 でも、予定時刻を過ぎても来ない。通知は「近くまで来て…
沖縄には、昔から“スリーエス”と呼ばれる心霊スポットがある。正式な名前ではない。地元の人間が勝手にそう呼んでいるだけだ。ただ、その響きとは裏腹に、噂は妙に生々しい。 「帰り道で事故る。」いつも決まって“帰り道”なんだ。 先輩が実際に事故を起こし…
引き返そう、と言ったのは友達だった。 「なんか、空気が変だよな…」 その一言で、僕らは島の端へ向かって歩き出した。 海風が戻ってくると、少し安心した。あのレストランの前だけ、妙に音が消えていたことに気づく。 浅瀬を渡りはじめたときだった。足の裏…
小学生の頃、妙な噂が流れていた。 「ひーとぅー島にある廃レストランに入ると、ケガをする」 誰が言い出したのか覚えていない。 沖縄に住んでいれば誰でも知っているような、海にぽつんと浮かぶ小さな島だ。 ひーとぅーは沖縄の方言で「イルカ」という意味…
その階段を上った。木がかすかに軋んだ音が、森の奥へ吸い込まれていく。 遊歩道は木製で、ところどころ古びていた。踏むたびに沈む感覚があったけれど、足は止まらなかった。 森の中は、外よりも静かだった。風の音もなく、鳥だけが、時々短く鳴いた。 道の…
その日は、とても晴れていた。空がやけに高く見える日だった。 ふとした瞬間に、あの入り口のことを思い出した。忘れていたわけではない。ただ、触れないようにしていただけだ。 家を出て、城跡へ向かう道を歩く。昼なのに、周りの音がゆっくり遠のいていく…
高校生になってから、体づくりに夢中になった。部活というより、自分のために強くなりたいと思った時期だった。休みの日は、家の近くの城跡でよく走ったり、腕立て伏せをしたりした。 昼間の城跡は、驚くほど明るかった。空が広くて、木々はしずかに揺れてい…
その子は、小さい頃から「見える」ほうだった。 夜の十時ごろ。夏の空気は湿っていて、虫の声だけが濃かった。中学生の僕らは懐中電灯を一本ずつ持って、二人で城跡に向かった。目的は、クワガタ探しだ。 城跡の裏に回って、森へ続くあの遊歩道の入り口が見…
中学一年の時の話です。時間は、深夜の二時くらい。家で寝ていたはずなのに、気づいたら外に立っていた。 場所は、家の近くの城跡。昔から「夜は行かないほうがいい」と言われていたところ。近所の人はみんな知っていた。あそこは、いわくつきだと。 なのに…
これは私が18歳の頃の話です。 一人暮らしを始めてから、夜の時間が少し好きになった。誰にも邪魔されず、考えごともできるし、ただ湯気の中でぼーっとできる。 この夜も、いつものように、リビングの灯りとテレビをつけたまま浴室に入った。生活音が外側…