近所の城跡
その階段を上った。木がかすかに軋んだ音が、森の奥へ吸い込まれていく。 遊歩道は木製で、ところどころ古びていた。踏むたびに沈む感覚があったけれど、足は止まらなかった。 森の中は、外よりも静かだった。風の音もなく、鳥だけが、時々短く鳴いた。 道の…
その日は、とても晴れていた。空がやけに高く見える日だった。 ふとした瞬間に、あの入り口のことを思い出した。忘れていたわけではない。ただ、触れないようにしていただけだ。 家を出て、城跡へ向かう道を歩く。昼なのに、周りの音がゆっくり遠のいていく…
高校生になってから、体づくりに夢中になった。部活というより、自分のために強くなりたいと思った時期だった。休みの日は、家の近くの城跡でよく走ったり、腕立て伏せをしたりした。 昼間の城跡は、驚くほど明るかった。空が広くて、木々はしずかに揺れてい…
その子は、小さい頃から「見える」ほうだった。 夜の十時ごろ。夏の空気は湿っていて、虫の声だけが濃かった。中学生の僕らは懐中電灯を一本ずつ持って、二人で城跡に向かった。目的は、クワガタ探しだ。 城跡の裏に回って、森へ続くあの遊歩道の入り口が見…
中学一年の時の話です。時間は、深夜の二時くらい。家で寝ていたはずなのに、気づいたら外に立っていた。 場所は、家の近くの城跡。昔から「夜は行かないほうがいい」と言われていたところ。近所の人はみんな知っていた。あそこは、いわくつきだと。 なのに…