気になる。

日常の中にある “小さな違和感” を記録しています。 怖いかどうかは、読んだあなたが決めてください。

第四話:昼の呼び声

高校生になってから、体づくりに夢中になった。
部活というより、自分のために強くなりたいと思った時期だった。
休みの日は、家の近くの城跡でよく走ったり、腕立て伏せをしたりした。

昼間の城跡は、驚くほど明るかった。
空が広くて、木々はしずかに揺れていてとても居心地が良い。

近くに運動できる公園がなかったので、
緑に囲まれたこの場所は、ちょうどよかった。
城跡という名前のわりに、そこはただの広場に見えた。

…ある日、ふと気づいた。

そういえば、誰もいない。

こんなに広くて、空気が澄んでいて、
散歩をしても、ランニングをしても、
人とすれ違うはずの場所なのに。

毎週来ているのに。
何ヶ月も通っているのに。

誰とも会った記憶がない。

走るのをやめて、息を整えながら、周りを見回した。
昼間なのに、影が深い。
風が吹いているのに、葉の音がしない。

誰もいないのに。誰かに見られてるような気がする。

そのときだった。

幼いころの記憶が、突然、繋がるみたいに戻ってきた。

深夜二時。
気づいたら立っていた城跡。
誘われるように進んだ遊歩道。
階段の手前で戻ってきた身体。
翌日、友達が感じた何か。
釘で打ちつけられた無数の魔除け、サングワー。

あれは、夜だけの話じゃなかったのか。

胸の奥が、ゆっくりと冷たくなっていった。

足が重い。
空気が動いたわけではない。
何かが近づいたわけでもない。

ただ、
“見られている” と思った。

呼ばれている。
あの日と同じように。
階段の向こうへ。