気になる。

日常の中にある “小さな違和感” を記録しています。 怖いかどうかは、読んだあなたが決めてください。

第六話:出口

その階段を上った。
木がかすかに軋んだ音が、森の奥へ吸い込まれていく。

遊歩道は木製で、ところどころ古びていた。
踏むたびに沈む感覚があったけれど、足は止まらなかった。

森の中は、外よりも静かだった。
風の音もなく、鳥だけが、時々短く鳴いた。

道のりは、およそ一キロ。
けれど、距離の感覚は曖昧だった。
どれだけ進んだのか、どこにいるのか、よくわからなかった。

自然の大きさに包まれていると、
自分がとても小さく感じた。
それが、なぜか心地よかった。

やがて、森が開けた。

出口だった。

そこから獣道を抜ければ住宅街へ出る。
知っている景色のはずなのに、
初めて見るような、どこか遠い場所のようだった。

なぜだろう。達成感はなかった。

あったのは、
悲しさにも似た、
寂しさのような感情だけだった。

何かが足りない。みたいな。

なぜ、あの道に呼ばれたんだろう。

残ったのは不思議な気持ちだけだ。

でも、

 

ひとつだけ確信している。

 

また呼ばれると。