気になる。

日常の中にある “小さな違和感” を記録しています。 怖いかどうかは、読んだあなたが決めてください。

第七話:海に浮かぶレストランの噂

小学生の頃、妙な噂が流れていた。


「ひーとぅー島にある廃レストランに入ると、ケガをする」


誰が言い出したのか覚えていない。

沖縄に住んでいれば誰でも知っているような、海にぽつんと浮かぶ小さな島だ。

ひーとぅーは沖縄の方言で「イルカ」という意味。
「あそこは昔、イルカ料理のレストランがあったらしいぞ」とか、「途中で工事が止まって廃墟になったんだよ」なんて、曖昧な噂ばかり。

ある日、友達と海沿いで遊んでいると、潮の満ち引きのおかげで島まで歩けそうなタイミングになった。


「行ってみる?」

 

そのひと言で、僕たちは探検隊みたいに胸を弾ませながら、海面がキラキラ光る浅瀬を渡った。

近づくにつれて、島の静けさが妙だった。

中は陰でよく見えない。
風の音ばかりが耳に届く。
島に上陸し、錆びて崩れかけ壁を見ながら、僕たちはゆっくり奥に歩いた。

レストラン跡の入り口まで来たとき、突然、胸の奥がざわついた。
怖い、というより“合わない”感じだった。
この場所だけ空気の重さがちがう。

 

「入る?」


「……やっぱ、やめとく?」

 

お互いの顔を見ても、答えは出ない。
けれど、子どもの好奇心は強い。
気づけば、僕は入口の影に手を伸ばしていた。

その瞬間――なぜか背筋がひやっとした。

続きが気になった僕らは、そっと入口をのぞき込んだ。
中は暗く、昼間なのに視界が落ち着かない。
なにも“起きない”。
ただ、静かすぎる。

その静けさが逆に、ずっと嫌な予感を残していた。

その違和感の正体に気づいたのは、島を出る“直前”だった。