気になる。

日常の中にある “小さな違和感” を記録しています。 怖いかどうかは、読んだあなたが決めてください。

第九話:帰り道

沖縄には、昔から“スリーエス”と呼ばれる心霊スポットがある。
正式な名前ではない。地元の人間が勝手にそう呼んでいるだけだ。
ただ、その響きとは裏腹に、噂は妙に生々しい。

「帰り道で事故る。」
いつも決まって“帰り道”なんだ。

先輩が実際に事故を起こしたらしい。
ブレーキは踏んだのに、効かなかったと言っていた。
原因は分からないまま、車は廃車になったらしい。

そんな話を聞いたあとに、俺たちは三人で行くことにした。
好奇心と、ちょっとした怖いもの見たさと…まあ、そういう年頃だった。

夜のスリーエスは拍子抜けするほど静かで、
何かがいる感じも、不気味な音が聞こえるわけでもなかった。

「なんだ、普通だな。」

友達が笑いながら言って、俺も同じように笑った。
結局、何事もなく引き返すことにした。

 

その帰り道だった。

 

運転していたのは友達。
俺は後部座席で、窓の外の真っ暗な森を眺めていた。

ふと、ライトが妙に広い範囲を照らしているように見えた。

そのとき、妙な違和感に気づいた。

 

ガードレールが、すぐ目の前に迫っている。

 

「やばい!!」

 

友達が叫びながらハンドルを切る。
タイヤが悲鳴を上げた。
金属がこすれる匂いが車内に流れ込む。

ほんの数十センチずれていたら、
俺たち三人は崖の下に落ちていたかもしれない。

車はしばらく止まったまま、誰も動けなかった。

友達が絞り出すように言った。

「カーブ、見えんかった…。」

 

俺も、見えなかった。
ライトが反射したわけでもなかった。
ただ、“道がなかった”ようにしか見えなかった。

帰り道が危ない。
そんな噂を思い出したのは、家についてからだ。

 

スリーエスの何が危険なのか。
場所なのか、何かがいるのか…それとも、

“帰る途中で何かが寄ってくる”のか。

俺たちは、それ以上深く話すことはしなかった。
ただ、もう二度と夜に近づく気にはなれなかった。